介護職員が施設内で老人をベランダから投げ落とし、殺してしまうという痛ましい事件が。行為を批判するだけでなく、介護職員の過酷な労働環境も改めて考える必要があるとも。
老人をベランダから投げ落とす
川崎市の介護付き有料老人ホームで、当時８７歳の入所者をベランダから投げ落として殺害したとして、２３歳の元職員の男が神奈川県警に殺人容疑で逮捕された。
社説｜老人ホーム殺人／介護現場の課題注視を | 河北新報オンラインニュース
すでに容疑を認めており、他に２人の殺害も供述していると。
この施設では以前にも川崎市などの調査で別の元職員３人による入居者への暴行なども発覚。介護報酬請求停止の処分を受けていました。
発覚した高齢者虐待、実際には氷山の一角でしかなく
厚労省によると、平成２６年度の施設での高齢者虐待は３００件と２年で倍増。
【川崎老人ホーム転落死】視点 急増する高齢者施設虐待 「犯罪の芽」早期に摘む必要 – 産経ニュース
と激増しており、介護施設内で起こる殺傷事件や虐待のニュースは後を絶ちません。
３００件という数字も自治体が虐待と判断した件数でしかなく、認知症患者など被害を訴えにくい状況にある人を考慮すれば実態ははるかに多いと考えられると。
介護施設で事故や虐待が発生した場合、介護保険法などに基づき施設は自治体に報告する義務がありますが、実際には内輪で解決しようと報告しない施設も多く正確に把握するのは難しい状態。
虐待が許されないのは当然ですが、介護職員の労働環境、給与の低さが引き起こす原因になっているとの話もあり、待遇改善も待ったなしだといわれます。
高齢者の多さに職員の数が追いついておらず、ひたすら時間に追われる毎日。仕事中にまるでゆとりを持てずストレスが積み上がる。残業ももちろん当たり前。
にも係わらず、福祉施設介護職員の平均月収は平均を大きく下回っているのが現実。
２６年度の福祉施設介護職員の平均月収は２１万９７００円で、全産業の３２万９６００円を大きく下回る。
【川崎老人ホーム転落死】視点 急増する高齢者施設虐待 「犯罪の芽」早期に摘む必要 – 産経ニュース
深刻な人手不足に給与の低さ、劣悪な労働環境が関係しているのはほぼ間違いなく、虐待を批判するだけでなく虐待する側の職員の心のケアにも十分な対応が必要だと。
この問題そう簡単に解決できる事でもなく、まずできる事から対策も始まっています。
虐待が起こりやすくなる理由の一つに、施設の職員と入所者が一対一になりやすいという物理的な原因があります。なので組織やチームとして問題の共有に力を入れることで人の目を増やし、虐待、「不適切なケア」を未然に防ごうと。
高齢者、認知症の人は今後も急増することは確実で、国や自治体の監査や指導のあり方も含め、個人でも介護の実情に関心を深めることが必要だと考えられています。
